あまりに彼は自由過ぎた。
突然現れたと思えば、いつの間にか私のアパートに住み着いて、気づいたら居なくなる。その代わりに大量にお金が置いてあったり、時折血だらけで帰って来たり、でっかい刀傷つけて帰って来たり。

そんな彼を縛りつけることもできないし、私にそんな権利なんてない。

猫みたいに気まぐれな人。
帰ってきたらぼんやり月を見ながら煙草を吸う彼の背中をキッチンから眺めて、適当に作ったご飯を出せば、彼はくるりと振り返り、おかずを少しつまんでそのまま私の太腿に頭を乗せた。ご飯食べてるのに、と言っても彼は笑うだけ。左手で彼の頭をくしゃりと撫でれば、どこでつけてきたか分からないシャンプーの匂い。胸がずきりと痛むなんて、ああ恥ずかしい。

「明日、死ぬかもしれない」

箸が止まる。

「・・・また突然だね」
「まあ、かもしれないだけだけど」

撫でている左手を彼が掴んで、ふにふにと揉まれる。彼の手は少し冷たくて、私の心を不安にさせる。

「でも、赤木くんがそんな事私に言うなんて以外だな」

再び箸をすすめ、そう言えばまた彼は笑った。

「以外・・・ね」








その日の晩は、彼と一緒に眠った。
珍しく腕枕をしてくれて、珍しく頭を撫でてくれて、珍しく優しく抱きしめてくれた。


目覚めれば、また机にどさりと置かれた札束。
隣にいない彼。またずきりと胸が痛む。




私の意識が遠のきそうな時に、おでこにひとつキスがあったことは、夢じゃないと信じたいな。


















やさしさが仇に
ばいばい、赤木くん またどこかで
























inserted by FC2 system