代打ちの打ち上げのようなもので風俗に行った時だ。
煌びやかなドレスを着て、赤いルージュ、重そうな睫毛。そんな雌の匂いをプンプン纏った女たちとは違った、白百合のような気品のある女が目に留まった。ヤー公たちはギラギラしたねえさん達に群がって、酒も回ったかはたまた権力か、ぎゃいぎゃいとお触りを楽しんでいた。俺はその塊から離れ一人で酒を飲んでいた時に、眺めていた白百合が酒を注いできた。

「こんばんは、とても素敵な髪ですね」
「・・・そう?」
「はい、すごく」

細い指が綺麗だなと思った時、すぐ彼女は呼び出されジジイを相手に接客していた。ベタベタとジジイが彼女に触れるのはなんだか嫌な気分だった。せっかく綺麗な花があるのに、枯れてしまうような、そんなイメージだ。

少ない会話だったが、あの女が気に入り、ヤー公が満足して撤収している途中で俺が泊まっているホテルの部屋番号を伝えた。夜中三時頃、コンコン、とノックがし、扉を開けるとそこにはさっきの白百合がいた。ドレスを脱ぎ、普通の恰好をしていたが美しさは変わらなかった。

「へえ、来てくれたんだ」
「はい、お邪魔してもよろしいでしょうか」
「いいよ」

ホテルのベッドに腰掛けた彼女の横に札束を投げると、彼女はチラリとそれを見たが特に喜ぶ様子はなかった。

「お金持ちなんですね」
「あぶく銭さ、俺には必要ない」
「私も・・・いらないです」
「?金目当てじゃないんだ」
「はい、・・・抱いてくれませんか?」

透き通った瞳とは正反対の発言。吸っていたタバコの灰を落とし、見た目によらないんだねと笑う。

「駄目ですか?」
「いや、いい。あんた、名前は?」
「・・・
「あれ、店の名前と違うじゃん・・・まあいいや」

女を抱くのは久しぶりだった。
服を脱がせば顔と同じ、美しい身体。舌を這わせば彼女の嬌声。久しぶりに官能的な気分になった。夢中で貪れば、彼女も俺に奉仕した。なんだこれ、久しぶりだな。偽装恋愛って言うのか?そんな気分。

「・・・、」

そろそろ限界だ、と思った刹那、彼女はぎゅっと俺を抱きしめて中に、と言う。言葉通り中で果てれば、彼女は優しく俺に口づけた。

「・・・ありがとう、また来てもいいですか?」
「俺はずっと此処にはいない。流浪の身さ」
「・・・そう、ですか」
「でも、居たきゃ居れば?」

ゆらりと彼女の瞳が揺れた。

「・・・お名前、伺ってもいいですか?」
「赤木、赤木しげる」
「しげるさん、・・・もういっかいしましょう?」

深く口づけそう強請る彼女はとても猟奇的だ。

「・・・ふーん、意外と肉食だね」

口づけを返せば、彼女はぽつんとこうつぶやく。

「・・・愛してくれなくていいのです、わたしも、愛さないから」





溢れる彼女の涙をそっと掬って、再び首筋に噛みついた。
















明けない夜 止まない雨
じゃあ、今だけ 今だけでいいから俺の事愛してよ
























inserted by FC2 system