仕事から帰って部屋の鍵を開け、ドアを開くとまた散々な世界が広がっていた。
ため息を吐いてハイヒールを脱ぎ、パンストを洗濯機に放り込む。リビングは散らかり放題・・・いや、散らかったと言うより、荒らした、暴れたという言葉がよく合う。 机の上にあったペン立てに入っていたペンは数本が折れて散らばり、花瓶は床に落ちて割れて花は水分を失って萎れていた。そして大量のお札が乱暴にばら撒かれていた。まるで子供がいらないおもちゃを投げつけたような、そんな感じで。

「また派手にやったね」

枕に顔を埋める白い小悪魔にそう声をかけても返事がない。
私は仕事で疲れた体を休めることなく部屋の掃除をすれば、小悪魔は機嫌が悪そうに私の背中を叩いた。

「痛い」
「片づけないで」
「片づけないと」
「セックスしよう」
「この前したじゃん」
「またしたい」

まるで母親に乳をねだるように、彼は私の背中に額を当てた。
いつだったか、ずぶ濡れの彼を拾ったのは。あれから彼は家に帰ることもなくこの家に居座り続けている。

「このお金どうしたの」
「今日もらった」
「もらったじゃないでしょ」
「ねえ、

そのままベッドに押し倒されて、彼はせっせとブラウスのボタンを外す。
露わになった胸に顔を埋めるその姿はまだ子供のようで。

「俺はもっと勝負がしたかった」
「相手が限界になっちゃったんだ」
「そう、だからつまらなくて」

部屋中に散らばるお金のせいで彼はイライラしているということが分かったと同時に、まだぎこちない口づけが一度、二度。いくら寝込みを襲われたとは言え、彼に快楽を覚えさせてしまったのは私。そしてまた快楽に溺れるのも私。

「セックスしたら部屋片付けようね」
「・・・うん」
「いい子」



そう言って今度は私から大人のキスを一度、二度。
彼は満足そうにほほ笑んだ。













足りない、たりない足りない
そう言って彼は私を貪るの
























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