「それ、ロン」
バラバラと牌を倒せば、対面のヤクザは顔を真っ青にした。それと同時に卓が思いきり叩かれ、イカサマだやれなんだと文句をつけられ、右腕をきつく掴まれた瞬間、イカサマはしてないけど私はここで死ぬんだなと暢気に考えてたら、雀荘の扉がカランと開いて、そこから真っ白な頭の男の人が来てからはあっさりと事が済んだ。

「すごいね、私の五百万を上乗せして一千万にしちゃってヤクザ追っ払っちゃうなんて」
「・・・そうかな。そういうアンタも中々面白い打ち方するよね」
「まあ・・・これで生活してるし・・・とにかく、お金は全部持っていっていいから」
「いや、いい」

ボストンバックに積み込まれた大金を手渡せば、彼は見向きもせずにタバコに火をつけ、そのまま雀荘を背に歩き出した。慌てて追いかけて、重たいバックを半ば引きずりながら彼の横に並ぶ。

「ちょっと待ってよ、こんなにお金私もいらないよ」
「お金目当てで打ってるんじゃないの」
「いや・・・ある程度の生活がおくれたらそれでいいし」
「クク・・・変な奴」

死神みたいな風貌だけど、笑うと意外と綺麗な人だと思った。

「・・・ね、お腹空かない?私の偏見だとごはんすらろくに食べなさそうなイメージあるけど」
「人並みには空くさ」
「じゃあふるまうよ、こんな大金持ち歩いて外食も物騒だし・・・あ、ねえ名前なんていうの?」

「赤木 しげる」
「へえ、私は
?」
「うん」
「ふうん、じゃあ、御馳走になろうか」



ひょんなことで出会った赤木さんは実は私と同い年だったり、私の料理は全然期待してなかったらしくきちんとした食事が出てきてしかもそこそこお口に合ったらしく、目を丸くして食べていたのはギャップというやつで、なんか初対面なのに妙に好印象を抱いてしまった。

「ねえ、なんでお金いらないの?お金が欲しくて打ってるんじゃないの?」
「・・・別に、金はいらない・・・」
「へー、根っからの勝負好き・・・って感じなんだ」
「まあ、そういうとこ。これだけ金があればあんたももう打たなくていいだろ」
「・・・え」

ガチャガチャと食べ終わった食器を片付けていると、そんな事を言う赤木さん。

「・・・赤木さん、めっちゃモテますでしょ」
「なんで?」
「いや、べつに・・・」

顔が赤くなった気がして、ふっと顔を逸らしてキッチンへ食器を運べば、赤木さんはごちそうさま、と一言言い、玄関へ。靴をもそもそと履いて、じゃあ、と言って去っていった。



「なんなの・・・もう」





















これは変かはたまた恋か
まだ、麻雀引退できないじゃん 赤木さんのばか
























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