★オリジナル設定有




交通事故だった。
いつも通り、本当にいつも通り教室にあいつを迎えに行って、家へ帰る。勿論歩道を歩く時車道側を歩くのは俺の、いや男の役目。当然それを怠った訳ではない。そもそも全て仕組まれたように、横断歩道を渡る前にが小学校の頃初めて俺のために作ってくれたフェルトのキーホルダーが千切れて一緒についていた鈴がチリンと鳴ったんだ。あぁ、よかった。そのまま何処かへ落として一生見つからないなんてことにならなくて。そう思い急いでそれを拾いあげれば、は既に横断歩道半ばまで歩いていた。くるりと振り返ってお兄ちゃん?と俺を呼んだ後ろから轟々と止まりそうにない黒塗りの車が 目掛けて猛スピードで突っ込んでくる。嘘だろう、と駆け出すが間に合わない。俺は一番見たくない瞬間を目の当たりにしてしまった。込み上げる吐き気を抑えながら、夥しい血を流す愛しい妹の元へ近づく。車はそのまま蛇行しながら電柱へ突っ込んでいた。周りが騒然とし救急車を呼べ!女の子がはねられた!など声が飛び交うが俺の耳には入らない。の横に跼み必死に名前を呼ぶが、応答がなかった。百回位は呼んだだろうか。普段であれば冷静に心臓マッサージだのなんだの最善を考えるが、妹の惨状にそんな冷静さなど吹き飛んで最早理性すら失いかけた。涙が止まらない。何故俺じゃない。なんでなんでどうしてどうして。



「聖也」


あいつは最期にそう名前を呼んで、微笑んだように見えた。
これでよかったんだよって、そう微笑んでいたように。


高校を出てすぐ家を出た。

帝愛グループの下働き期間は全てを忘れられた気がしたんだ。ただ這い上がりたいという気持ちが、妹を失った絶望をほんの少しだけ消してくれたが、本髄は消えない。何度も死のうと思った。でもその度あいつが脳裏で泣くんだ。やめろよ、俺だって泣きたいよ。お前がいない世界なんて、生きてたって意味ないと。

「愛してるよ、聖也」



ふとそんな声がした。




「俺も愛してるよ、ずっと」





















にじんだ世界はどこまでも綺麗で
ここに君がいればもっと綺麗なのに なんて思うのはよくないな。

























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