「ほんっとあり得ないよね、十連勤なんて当たり前だしさ」

お怒りなのか機嫌がいいのか、いやむしろ両方を半分ずつと言えるような態度で、隣に座る女は缶ビールを飲み干した。

「確かに、そりゃ社畜だな」
「でしょ!?あげくクリスマスまで連絡がないんだもん!信じられない!」
「ってかお前いいのかよ、クリスマスなのにこんなとこで飲んで・・・」

ガチンと空の缶をテーブルに叩きつけて「いいのよ!あんな奴!」と大きな声で言い放った。
結構出来上がってんな、と横目でそれを見ながら自分もビールを飲めば、急に背中を丸めて彼女は言う。

「いいのよ、カイジといるほうがよっぽど楽だもん」

知らぬが仏という言葉があるように、本当に無知とは怖いものだ。
俺の長年の思いも知らず、隣にいるという女はクリスマスの夜彼氏に構ってもらないからと言って友人である俺の家に突然来てしこたまビールを飲んでいる。気楽なもんだ。

「あーーーもうほんとカイジって楽だよねーーーー」

そう言って今度はベッドに横になる始末。

「おいおい、呑み過ぎじゃねえのか?あとちょっとは意識しろよ、俺も男だぞ」
「え?あー、うん、男だけど、うん」

とろん、とした表情で俺を見るものだから、鼓動が早まる。

「カイジみたいな優しい人が彼氏がよかったな」
「・・・お前、それどういう意味だよ」

いい加減イライラしてきた。
こちとら聞きたくもない彼氏の愚痴を聞いて、更には酔っぱらって横になってる女に何もせず我慢しているというのに。

「そのまんまの意味だよ」

その言葉を切欠に、俺は持っていたビールを置き、の上に跨る。顔を赤らめて、ぼーっと俺を見上げるはいつもより何倍も色っぽかった。

「俺も酔ってる」
「私も酔ってる」
「好きだって言ったら、困るか」
「困らない」
「好きだ」








「うん、おいで、カイジ」


















神様が許さなかった恋
の携帯が鳴っていたのに気づき 俺は彼女の耳を塞いで食らいついた

























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