「ひろゆきがお世話になってます」

そう俺が一言言うと、目の前の女は顔を真っ赤にしてやめてくださいよもう!と怒り出す。喫茶店で俺はブラックを、彼女はミルクティーを注文し、かれこれ数十分寛いでいる。 傍から見ればおっさんと女子大生。あり得ない構図。通り過ぎる客も店員も少し怪しげな目線で俺たちを見るが、それももう慣れたなと思う。

「あれは忘れられねえさ、だって高校生が菓子折り持って俺にそう言うんだからよ」
「あああああ、あの頃に戻って私を殴りたい・・・」
「いいじゃねえか、別にあれはあれで可愛かった」

そう言って笑えばまた彼女は顔を真っ赤にして俯いた。怒った先ほどとは違い、照れているようだ。ああ、からかいがいのある女だよ。

「最近、ひろはどうなんですか」

もうすっかり冷めたミルクティーを飲み、彼女はそう言って話題を変えた。俺も釣られるように冷めた珈琲に口をつける。

「ああ、最近会ってない。元気なんじゃないかな」
「だといいんですけどね・・・」
はいつひろと付き合うんだ」

びくりと目を見開いてカップを置く彼女は本当に分かりやすい。

「ななな、なにを沢田さん、なにを言って沢田さん」
「ひろゆきの幼馴染じゃ、ちと寂しいだろ」
「でも、わたしは沢田さんが好きです!」

はいはい、とあっさり流すとまた怒り出す彼女を見ると不思議と心が和む。だからこうして頻繁に飯に誘ったりしている訳だが、決して恋愛感情を抱いていない訳ではない。 俺もいい大人だ。彼女を振り回す訳にはいかない。と、思うが中々思うようにいかない。ふと会いたくなりこうして連れ出してしまう。

「沢田さんは優しくて、こんな私の話を聞いてくれるから、大好きなんです」
「でもまあ俺から見ればお前はまだ子供だよ」
「何言ってるんですか、私もう十九ですよ!?結婚だって子供だって作れますから!」
「ああ、。パンケーキ食うか?これ、うまそうだな」
「食べます!!!はんぶんこしましょう!!!」

お前はやっぱり子供だな、とテーブル越しに頭を撫でると猫の様に目を細めたを愛しく感じた。
ずっとこうして愛でたいなあなんて、そう思いながら店員に注文をする。













パンケーキ物語
小リスの様に頬張る頬についたクリームをとってやるこの時間が幸せなんだ

























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