かなしい、俺はとても悲しい。
アルコールの匂いを纏い執拗に口づけを強請る彼女を見下ろし、俺はただそう思っていた。
常夜灯の明りの下、彼女はまっすぐ俺を見て唇を重ねるが、きっと彼女の目に俺は映っていない。
"天さん、私の事恋人として見ることができないんだって"
"でも私の事は抱いてくれるの、どういうことかな"
"私も天さんの奥さんになりたい、ねえひろ、私どうしたらいいのかな"
少し伸びたの爪が俺の背中に食い込んだ時、はこう言った。
「天さん、すき」
その言葉を聞いた瞬間、俺の何かがぷちんと切れた。
本能の赴くまま彼女を抱く。嬌声を上げるは、変わらずこう言うんだ。
「天さん、すき、天さん」
「、俺も大好きだ」
「天さん、もっと、もっとして」
「、俺だよ、ひろゆきだよ」
「天さん、天さん」
「、なあ、俺だよ」
ぼろぼろとは涙を流しながら俺を受け入れるが、それは俺じゃない。
俺は天さんなんだ、でも俺は俺で、俺はが大好きなのに。
「、好きだ、大好きだ、ずっと好きだ、愛してる」
「私も、ずっと好きだったの、大好き」
かなしい、ああ、かなしい。
ひとを愛せなかったひと
最後に ひろ、ごめんね と彼女はそう言った。
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